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虚業への分岐点

幸福の科学のカルト性が具体的に表れてきた事柄には、神託結婚問題発生と時期を同じくする、紀尾井町ビルへの移転を象徴とした、教団の拡大路線への変質があります。

紀尾井町ビル
(紀尾井町ビル外観)

この紀尾井町ビルへの移転に関する経緯も、「虚業教団」の中に詳しく記述されています。なにしろ神託結婚と同様に、この担当者が関谷氏本人であったので、これ以上に正確なものはないでしょう。

「場所など問題ではない。素晴らしい教えを説きさえすれば、地球の裏側からでもここへ尋ねてくるようになる。だから、この西荻窪が聖地なのだ。天理教ができて天理市になったように、「幸福の科学」がこの町の名前を変える日がきっとくる」

初めの頃、大川はこのようなことを公言していました。
杉並区の西荻窪は、最初の信者の原氏が提供した一室から始まり、やがて事務所や専門書店、研修道場から喫茶店まで構えるようになった土地だったからです。

神託結婚などの問題を抱えながらも、表向き順調な成長を進めていましたが、しかし、さらなる拠点拡張の必要性から、西荻窪駅前のビルの賃貸を申し込んだ際に、「宗教団体お断り」と門前払いをくらうことになります。

この時期はまだ宗教法人格を取得してはいませんでしたが、地元の人間からは、既に少なからずそのような目で見られていたということでしょう。

この頃では、大川の方にも、かつての言葉はどこへやらで、教団発足の地への感謝も愛着もすっかり消え失せて、言動は変化していました。

「こんな田舎に何でいなければならないんだ。政治家とのコンタクトも、これからは必要になる。中央へ出たい。高級霊からの通信も、それがいいと言っている」

移転プロジェクトを任された関谷氏は、まず新宿三丁目にあった貸しビルを、宗教団体を表に出さず、出版社として交渉に臨み、まずその内諾を取りつけてから、さらにその実績を社会的信用の足掛かりとして、紀尾井町ビルの契約を成立させようと企みます。

「高級霊から指示が下り、九次元霊全員が新宿でなく紀尾井町ビルに移れと言っている」

こうしてまた例によって、大川からの「神託」が同氏を後押ししました。

結果的に、この策が上手くいって、教団はまんまと紀尾井町ビルへの移転を果たすことになります。
会内ではこれを教団の発展繁栄の象徴、教団が高級霊の加護を受けていることの証だと声高に喧伝しました。


この移転を実現させたあと、当の関谷氏自身は団体の変質を感じて会を去っていくことになりますが、著書の中で、当時に事をこう回顧しています。

「これが「幸福の科学」における私の最後のご奉公になった。しかしそれを今、複雑な気持ちで思い出す。この紀尾井町ビルが、会の拡大路線に火をつけてしまったのではないだろうか。四月になると、高級霊から大川に「伝道の許可」が与えられ、会員獲得へ盛んに檄が飛ぶようになった」

紀尾井町ビルへ移転したからといって、西荻窪の拠点が閉鎖されたわけではなく、それらの運営に加えて、さらに高額な新居の経費がのしかかってくることになったわけですから、伝道勧誘が教団維持のための死活問題として、大伝道路線への転換の背景にあるのは明らかであり、90年の5月研修を境に、露骨な拡大路線に変質していきます。

ただ、そうした変質は、カルトの性質からして遅かれ早かれどのみちやってきたことでしょう。
私自身は、この紀尾井町ビル移転の流れの中に潜む、その後の教団に残した負の影響を別に見ています。

それは、「宗教団体を隠して、出版社として契約」ということ。
新宿三丁目の内諾に用いられただけでなく、実は紀尾井町ビルの契約自体がこれで行われており、当然、入居後にビル側との間で問題になっています。

紀尾井町レイアウト
(当時の紀尾井町本部の様子。宗教団体の機能がフロアーを占める)

「やってしまえば、こちらのもの」

教祖が言うことは、霊的には既に実現している。
だから、あとはとにかく、ただ形を整えるだけ。
手段や方法、プロセスなど、どうでも良いのだと。

自らが標榜する「神理」の団体であればこそ、なおさら使ってはならない禁じ手を、「神託」とか「高級霊からの通信」とか言われてしまえば、問答無用となって思考停止してしまう。

それを信じる者の中にしかいない「権威」によって、良心が働きを失って善悪の判断が混乱し、それを信じる者の中でしか通じない「論理」によって、世間法も社会的責任も軽んじられるようになっていきます。

独善的に無謀な活動をし、あとから辻褄合わせに奔走する。
どのカルトも似たり寄ったりですが、この教団の体質も、この時に確立されたと考えられ、紀尾井町ビル移転という、教団にとっての「成功」がもたらした問題の本質というのは、ここにあると思っています。
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