記者会見@滋賀県庁
去る3月2日、滋賀県庁にて、幸福の科学学園との裁判に勝訴したフリーライターと、地元でこの学園問題に取り組む地域住民合同による記者会見が行われました。

この様子は、同フリーライターが運営する「やや日刊カルト新聞」で報道されています。
関連記事リンク
「幸福の科学学園問題でフリーライターらが会見=滋賀県」
当日会場で配布された資料の一部を入手しましたので、ここに転載してご紹介します。
【記者会見資料】
幸福の科学学園との訴訟における
勝訴確定について
2016.3.2 藤倉善郎
幸福の科学学園が『週刊新潮』2012年11月22日号掲載の記事について新潮社及び関係者を被告として東京地裁に提訴した裁判で、2016年1月22日、最高裁判所が学園側の上告を不受理と決定しました。これにより、記事の正当性を認め原告の請求を全て棄却した東京高裁判決(2015年3月26日)が確定しました。
同記事は、栃木県那須町にある幸福の科学学園那須本校において違法な教育が行われており、生徒たちの人権が侵害されていることを指摘する内容でした。記事の正しさが判決で認められたこととあわせて、現在も存続している同学園の問題についてご報告させていただきます。
①裁判について
東京地裁提訴日:2012年12月7日
原告:学校法人幸福の科学学園
被告:株式会社新潮社、佐藤隆信(同社代表取締役)、酒井逸史(『週刊新潮』編集長)、担当デスク、担当記者、藤倉善郎(フリーライター)
原告の請求:損害賠償1億円の支払い、謝罪広告の掲載
訴訟の原因となった『週刊新潮』の記事は、 〈特別読物 文科省も県もお手上げ! 子供に嘘を刷り込むデタラメ授業! 「坂本龍馬の前世は劉備」と教える「幸福の科学」学園の罪〉 (添付資料)と題するもので、幸福の科学学園那須校について、おおまかに以下の3点の問題を指摘する内容でした。
(1) 学園では、国語や歴史といった一般的な教科においても、たとえば「坂本龍馬の過去世は劉備玄徳だ」などと、教師が教祖・大川隆法氏による「霊言」に基づいた授業を行っている。これは客観的事実・史実と相反するものであり、学習指導要領から逸脱 している。
(2) 学園では、幸福実現党を支持し賞賛する授業を行ったり、寮に同党の声明文を掲示するなどして、生徒に対して政治教育を行っており(添付資料)、学校による政治教育・政治活動を禁止する教育基本法に違反 している。
(3) 学園では、少なくとも2012年まで、寮生活のルールに違反した生徒たちに対して、寮の空き部屋(鍵はかからない)を用いて、授業を受けさせず携帯電話を取り上げ食事や入浴の際も他の生徒から隔離する環境に置いて、最大で3週間、教祖の説法DVDを見せるなどする「独房懲罰」を行ってきた(添付資料)。記事では触れていないが、これは 2007年の文部科学省通知「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」に反する 。
裁判では学園側は、記事の真実性を争うとしながら、具体的事実について真実ではないとする主張がほとんどなく(もともと記事掲載前の取材対応の段階で、学園側は大筋の事実を認めていた)、記事の評論や解釈をめぐる主張が主でした。政治教育の存在については、事実関係をめぐる主張どころか、ほとんど言及すらしませんでした。

証人尋問では、学園の教頭が、歴史の授業だけでも週に1回は、教師が霊言に基づく歴史上の人物の過去世などに言及していることを証言しました。一方、被告・藤倉への尋問では、学園側は、インターネット上にあった藤倉のプライベート写真(右)などを示して、「こんな格好で取材しているのか」と質問するなど、実質的な中身はありませんでした。
高裁判決は東京地裁判決を支持した上で、いくつか補足を加える内容でした。両判決ともに、記事の内容について真実性・真実相当性、公共性、公益目的を認め、違法性はないと判断し、「恐怖の学園」「デタラメ授業」「オカルト授業」等の評論表現についても「評論としての域を逸脱するとはいえない」と認定しました。
学園側は裁判の中で、藤倉が当時大津市で開設予定の段階にあった学園関西校について、地元の反対運動の集会に招かれて講演を行うなどしていたことを根拠に、記事は関西校の開校を阻止するために学園に恨みを持つ元生徒を利用し偏見を煽るものだったと主張しました。しかしこの点についても、地裁判決は「被告藤倉が原告学園の教育実態に関する懸念を広く社会に伝えようとする一貫した姿勢」と認定しています。
②週刊新潮報道以降の幸福の科学学園
約3年かけて、幸福の科学学園の違法性と人権侵害を指摘した記事の正当性が裁判で認められましたが、同学園は現在も存続しています。訴訟提起以降の幸福の科学学園をめぐる重要な動きは、下記の通りです。
2013年:滋賀県大津市に関西校を開設。2011年の段階で、予定地の仰木の里学区内の世帯数の76%にあたる8,007筆(大津市内で20,958筆、滋賀県内で23,826筆)の反対署名が集まり、県知事に提出された。しかし学園側が住民との話し合いを拒否したまま開校したため、開校から間もなく3年経つ現在も反対運動が継続し、専門家が学園の敷地の危険性を指摘していることを受けて裁判も係争中(被告は大津市)。
2014年:学校法人幸福の科学学園が設置申請していた「幸福の科学大学」(千葉県長生村)について、当時の下村博文文科相が「不認可」と決定。審査過程において 学園側が文科省職員を脅すなど不適切な行為 があったとして、後に5年間、申請があっても認可しないとのペナルティが決定。
2015年:宗教法人幸福の科学が、大学用に建設した施設で私塾「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」(HSU)として開設。「専修学校」「各種学校」としての認可も得ておらず、教義や霊言に基づいた教育やUFO研究などを行う信者養成機関。この年、幸福の科学学園那須校の卒後生約100人のうち 8割が進学・就職を放棄してHSUに進んだ(参考:栃木県平成27年度学校基本統計)。早稲田・慶応大に約30人が合格したが、その大半もHSUに進んだ。
2016年:4月に関西校から初の卒業生が出る予定。
③関西校も含む幸福の科学学園の問題点
(学校法人の問題)
今回最高裁决定が出た裁判において争われた記事の内容は、当時すでに開校していた那須校についてのみであり、関西校は含まれていません。しかし同学校法人、理事長、創設者が後述のような性格のものであることから、関西校の教育実態も那須校と同様であることが懸念されます。
幸福の科学学園那須校、関西校、幸福の科学大学(不認可決定済み)はいずれも、「学校法人幸福の科学学園」という同一の法人が運営あるいは設置申請していたものです。那須校については、その教育実態が違法であることが今回の最高裁决定で改めて確認されました。また、大学設置については、申請の過程において学校法人の木村智重理事長が文科省職員を脅したとされています。
学園・大学の創設者は、いずれも幸福の科学の教祖・大川隆法氏です。大川氏は大学設置について、2013年2月の「『教育の使命』講義」の中で、こう発言しています。
「文科省の指導要領は無視してはなりませんので。認可が下りるまでは、それは、うはは!(認可が下りたら) 逸脱して行くことは当然ありうるかと思っております」
大川氏は同じく「『教育の使命』講義」の中で、子供が関西校を受験し不合格になったが後から補欠合格になったと語る信者に対して、こうも語っています。
「よく入れたね。普通は入れないもんですけどねえ。あなたの活躍がよっぽど欄外にでも書いてあったんじゃないですかね。親の奉仕活動が書いてることもあるので、そういう場合に補欠の順位が移動することがありますので。(略) 地元の反対運動みたいの押さえ込んでくれたから上がったりと、ちょっと上がり下がりはあるんですけど」
このように、大学設置について初めから文科省の基準に従う気がないことや、関西校において公正な受験が行われていないことを、創設者自らが明かしています。
学校法人としては、那須校についての記事の内容が争われた今回の裁判においても、教団内で信者に見せているビデオ等においても、記事で指摘された問題について全く反省しておらず、問題を是正する旨を表明してもいません。
(私学の宗教教育と人権の関係)
法令に反して、客観的事実を歪め政治的に偏った教育を中高生に施すことは、未成年信者の健全な教育を受ける権利を侵害するものです。また、記事で指摘した「独房懲罰」は、教育以外に関する生徒たちの基本的人権にもかかわります。私学には宗教教育を行う自由がありますが、その「自由」は、法令に違反して生徒の人権を侵害することを正当化できるものではありません。
幸福の科学の職員数は1000人規模と見られており、4学年全て揃うと1000人を超えるHSUの「卒業生」を全て教団が雇用することは不可能です。学園の卒業生の8割(2015年那須校の場合)が進学・就職を放棄して教団の私塾(HSU)に入るという状況は、社会一般で通用しない価値観を強烈に刷り込まれた若者信者を、教団で雇用できない状態のまま大量に生み出すという構造につながります。このように、学園在学中の生徒に対する教育内容に問題があるだけではなく、学校法人と教団が一体となって生徒たちの人生を大きく左右してしまう不健全な構造を生み出しています。
幸福の科学という宗教団体はこれまで、たとえばオウム真理教のようなテロなどの組織犯罪によって摘発されたことはありません。しかし学園における偏った教育と人権侵害は、組織的な法令違反です。
(私学助成の問題)
栃木県と滋賀県は、この学園にそれぞれ私学助成を行っています。栃木県は2012年度に約1億2000万円、2013年度は9300万円。滋賀県は2013年度が約6600万円で、2014年度が約1億1000万円です。
違法な養育や生徒への人権侵害の疑いが濃厚な学校について、毎年1億円規模の税金まで投入し続けることは、税金の使途としての正当性が疑われます。
また、学園卒業生の8割が進学・就職を放棄して教団の私塾に入るという状態は、いわば、県が認可した学校が、事実上、特定の宗教団体の出家者を養成する機関に過ぎなくなっていることを意味します。このような状態にある私学に助成を行うことが、政教分離原則上の合理性があるのか疑問です。
以上のことから、文部科学省、栃木県、滋賀県は、学園の実態についての詳細な調査し、生徒たちが健全な教育を受けることができる状況を確保するため、是正指導はもちろんのこと必要であれば認可取り消し等も含めた処分を検討すべきと考えます。
(メディアの皆様へのお願い)
この学園のような問題は、おそらく教育行政が想定していなかった質・度合いの問題であり、調査や是正指導のスキームが確立されていない印象もあります。通常、上記の那須校のような問題は「児童虐待」と呼んでも差し支えないと思いますが、児童相談所は保護者や同居人による虐待には対処しても、「学校」内での虐待について調査や指導を行う機能がありません。
また、県が認可した以上、そこで大きな問題が発覚することを県側も望まないという心理もはたらきます。
だからこそ、問題の所在を明らかにし対処の必要性を訴える上では、報道の果たす役割が欠かせません。地元メディアの皆さんには、ぜひこの学園の問題に目を向け、取材・報道をしていただければと思います。資料提供や証言者の紹介等、できる限りご協力させていただきます。
プロフィール
藤倉善郎(ふじくら・よしろう)
1974年、東京生まれ。2004年からフリーライターとして、カルト宗教問題を取材。2009年から幸福の科学を取材し、同年、ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊(現在、藤倉を含め9名の記者が所属)。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社)。『週刊新潮』2014年7月24日号では、当時設置認可申請中だった「幸福の科学大学」の問題をリポートしている。

この様子は、同フリーライターが運営する「やや日刊カルト新聞」で報道されています。
関連記事リンク
「幸福の科学学園問題でフリーライターらが会見=滋賀県」
当日会場で配布された資料の一部を入手しましたので、ここに転載してご紹介します。
【記者会見資料】
幸福の科学学園との訴訟における
勝訴確定について
2016.3.2 藤倉善郎
幸福の科学学園が『週刊新潮』2012年11月22日号掲載の記事について新潮社及び関係者を被告として東京地裁に提訴した裁判で、2016年1月22日、最高裁判所が学園側の上告を不受理と決定しました。これにより、記事の正当性を認め原告の請求を全て棄却した東京高裁判決(2015年3月26日)が確定しました。
同記事は、栃木県那須町にある幸福の科学学園那須本校において違法な教育が行われており、生徒たちの人権が侵害されていることを指摘する内容でした。記事の正しさが判決で認められたこととあわせて、現在も存続している同学園の問題についてご報告させていただきます。
①裁判について
東京地裁提訴日:2012年12月7日
原告:学校法人幸福の科学学園
被告:株式会社新潮社、佐藤隆信(同社代表取締役)、酒井逸史(『週刊新潮』編集長)、担当デスク、担当記者、藤倉善郎(フリーライター)
原告の請求:損害賠償1億円の支払い、謝罪広告の掲載
訴訟の原因となった『週刊新潮』の記事は、 〈特別読物 文科省も県もお手上げ! 子供に嘘を刷り込むデタラメ授業! 「坂本龍馬の前世は劉備」と教える「幸福の科学」学園の罪〉 (添付資料)と題するもので、幸福の科学学園那須校について、おおまかに以下の3点の問題を指摘する内容でした。
(1) 学園では、国語や歴史といった一般的な教科においても、たとえば「坂本龍馬の過去世は劉備玄徳だ」などと、教師が教祖・大川隆法氏による「霊言」に基づいた授業を行っている。これは客観的事実・史実と相反するものであり、学習指導要領から逸脱 している。
(2) 学園では、幸福実現党を支持し賞賛する授業を行ったり、寮に同党の声明文を掲示するなどして、生徒に対して政治教育を行っており(添付資料)、学校による政治教育・政治活動を禁止する教育基本法に違反 している。
(3) 学園では、少なくとも2012年まで、寮生活のルールに違反した生徒たちに対して、寮の空き部屋(鍵はかからない)を用いて、授業を受けさせず携帯電話を取り上げ食事や入浴の際も他の生徒から隔離する環境に置いて、最大で3週間、教祖の説法DVDを見せるなどする「独房懲罰」を行ってきた(添付資料)。記事では触れていないが、これは 2007年の文部科学省通知「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」に反する 。
裁判では学園側は、記事の真実性を争うとしながら、具体的事実について真実ではないとする主張がほとんどなく(もともと記事掲載前の取材対応の段階で、学園側は大筋の事実を認めていた)、記事の評論や解釈をめぐる主張が主でした。政治教育の存在については、事実関係をめぐる主張どころか、ほとんど言及すらしませんでした。

証人尋問では、学園の教頭が、歴史の授業だけでも週に1回は、教師が霊言に基づく歴史上の人物の過去世などに言及していることを証言しました。一方、被告・藤倉への尋問では、学園側は、インターネット上にあった藤倉のプライベート写真(右)などを示して、「こんな格好で取材しているのか」と質問するなど、実質的な中身はありませんでした。
高裁判決は東京地裁判決を支持した上で、いくつか補足を加える内容でした。両判決ともに、記事の内容について真実性・真実相当性、公共性、公益目的を認め、違法性はないと判断し、「恐怖の学園」「デタラメ授業」「オカルト授業」等の評論表現についても「評論としての域を逸脱するとはいえない」と認定しました。
学園側は裁判の中で、藤倉が当時大津市で開設予定の段階にあった学園関西校について、地元の反対運動の集会に招かれて講演を行うなどしていたことを根拠に、記事は関西校の開校を阻止するために学園に恨みを持つ元生徒を利用し偏見を煽るものだったと主張しました。しかしこの点についても、地裁判決は「被告藤倉が原告学園の教育実態に関する懸念を広く社会に伝えようとする一貫した姿勢」と認定しています。
②週刊新潮報道以降の幸福の科学学園
約3年かけて、幸福の科学学園の違法性と人権侵害を指摘した記事の正当性が裁判で認められましたが、同学園は現在も存続しています。訴訟提起以降の幸福の科学学園をめぐる重要な動きは、下記の通りです。
2013年:滋賀県大津市に関西校を開設。2011年の段階で、予定地の仰木の里学区内の世帯数の76%にあたる8,007筆(大津市内で20,958筆、滋賀県内で23,826筆)の反対署名が集まり、県知事に提出された。しかし学園側が住民との話し合いを拒否したまま開校したため、開校から間もなく3年経つ現在も反対運動が継続し、専門家が学園の敷地の危険性を指摘していることを受けて裁判も係争中(被告は大津市)。
2014年:学校法人幸福の科学学園が設置申請していた「幸福の科学大学」(千葉県長生村)について、当時の下村博文文科相が「不認可」と決定。審査過程において 学園側が文科省職員を脅すなど不適切な行為 があったとして、後に5年間、申請があっても認可しないとのペナルティが決定。
2015年:宗教法人幸福の科学が、大学用に建設した施設で私塾「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」(HSU)として開設。「専修学校」「各種学校」としての認可も得ておらず、教義や霊言に基づいた教育やUFO研究などを行う信者養成機関。この年、幸福の科学学園那須校の卒後生約100人のうち 8割が進学・就職を放棄してHSUに進んだ(参考:栃木県平成27年度学校基本統計)。早稲田・慶応大に約30人が合格したが、その大半もHSUに進んだ。
2016年:4月に関西校から初の卒業生が出る予定。
③関西校も含む幸福の科学学園の問題点
(学校法人の問題)
今回最高裁决定が出た裁判において争われた記事の内容は、当時すでに開校していた那須校についてのみであり、関西校は含まれていません。しかし同学校法人、理事長、創設者が後述のような性格のものであることから、関西校の教育実態も那須校と同様であることが懸念されます。
幸福の科学学園那須校、関西校、幸福の科学大学(不認可決定済み)はいずれも、「学校法人幸福の科学学園」という同一の法人が運営あるいは設置申請していたものです。那須校については、その教育実態が違法であることが今回の最高裁决定で改めて確認されました。また、大学設置については、申請の過程において学校法人の木村智重理事長が文科省職員を脅したとされています。
学園・大学の創設者は、いずれも幸福の科学の教祖・大川隆法氏です。大川氏は大学設置について、2013年2月の「『教育の使命』講義」の中で、こう発言しています。
「文科省の指導要領は無視してはなりませんので。認可が下りるまでは、それは、うはは!(認可が下りたら) 逸脱して行くことは当然ありうるかと思っております」
大川氏は同じく「『教育の使命』講義」の中で、子供が関西校を受験し不合格になったが後から補欠合格になったと語る信者に対して、こうも語っています。
「よく入れたね。普通は入れないもんですけどねえ。あなたの活躍がよっぽど欄外にでも書いてあったんじゃないですかね。親の奉仕活動が書いてることもあるので、そういう場合に補欠の順位が移動することがありますので。(略) 地元の反対運動みたいの押さえ込んでくれたから上がったりと、ちょっと上がり下がりはあるんですけど」
このように、大学設置について初めから文科省の基準に従う気がないことや、関西校において公正な受験が行われていないことを、創設者自らが明かしています。
学校法人としては、那須校についての記事の内容が争われた今回の裁判においても、教団内で信者に見せているビデオ等においても、記事で指摘された問題について全く反省しておらず、問題を是正する旨を表明してもいません。
(私学の宗教教育と人権の関係)
法令に反して、客観的事実を歪め政治的に偏った教育を中高生に施すことは、未成年信者の健全な教育を受ける権利を侵害するものです。また、記事で指摘した「独房懲罰」は、教育以外に関する生徒たちの基本的人権にもかかわります。私学には宗教教育を行う自由がありますが、その「自由」は、法令に違反して生徒の人権を侵害することを正当化できるものではありません。
幸福の科学の職員数は1000人規模と見られており、4学年全て揃うと1000人を超えるHSUの「卒業生」を全て教団が雇用することは不可能です。学園の卒業生の8割(2015年那須校の場合)が進学・就職を放棄して教団の私塾(HSU)に入るという状況は、社会一般で通用しない価値観を強烈に刷り込まれた若者信者を、教団で雇用できない状態のまま大量に生み出すという構造につながります。このように、学園在学中の生徒に対する教育内容に問題があるだけではなく、学校法人と教団が一体となって生徒たちの人生を大きく左右してしまう不健全な構造を生み出しています。
幸福の科学という宗教団体はこれまで、たとえばオウム真理教のようなテロなどの組織犯罪によって摘発されたことはありません。しかし学園における偏った教育と人権侵害は、組織的な法令違反です。
(私学助成の問題)
栃木県と滋賀県は、この学園にそれぞれ私学助成を行っています。栃木県は2012年度に約1億2000万円、2013年度は9300万円。滋賀県は2013年度が約6600万円で、2014年度が約1億1000万円です。
違法な養育や生徒への人権侵害の疑いが濃厚な学校について、毎年1億円規模の税金まで投入し続けることは、税金の使途としての正当性が疑われます。
また、学園卒業生の8割が進学・就職を放棄して教団の私塾に入るという状態は、いわば、県が認可した学校が、事実上、特定の宗教団体の出家者を養成する機関に過ぎなくなっていることを意味します。このような状態にある私学に助成を行うことが、政教分離原則上の合理性があるのか疑問です。
以上のことから、文部科学省、栃木県、滋賀県は、学園の実態についての詳細な調査し、生徒たちが健全な教育を受けることができる状況を確保するため、是正指導はもちろんのこと必要であれば認可取り消し等も含めた処分を検討すべきと考えます。
(メディアの皆様へのお願い)
この学園のような問題は、おそらく教育行政が想定していなかった質・度合いの問題であり、調査や是正指導のスキームが確立されていない印象もあります。通常、上記の那須校のような問題は「児童虐待」と呼んでも差し支えないと思いますが、児童相談所は保護者や同居人による虐待には対処しても、「学校」内での虐待について調査や指導を行う機能がありません。
また、県が認可した以上、そこで大きな問題が発覚することを県側も望まないという心理もはたらきます。
だからこそ、問題の所在を明らかにし対処の必要性を訴える上では、報道の果たす役割が欠かせません。地元メディアの皆さんには、ぜひこの学園の問題に目を向け、取材・報道をしていただければと思います。資料提供や証言者の紹介等、できる限りご協力させていただきます。
プロフィール
藤倉善郎(ふじくら・よしろう)
1974年、東京生まれ。2004年からフリーライターとして、カルト宗教問題を取材。2009年から幸福の科学を取材し、同年、ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊(現在、藤倉を含め9名の記者が所属)。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社)。『週刊新潮』2014年7月24日号では、当時設置認可申請中だった「幸福の科学大学」の問題をリポートしている。
スポンサーサイト