カルト宗教(霊感被害)を裁判に訴えようとするとき
脱会被害者の方などから、教団に対する訴訟のご相談をお受けすることがあります。内容に応じて、その道に通じた弁護士事務所などを都度ご紹介させて頂いておりますが、その際いわゆる「霊感被害」については、いつもまず初めにご案内をしている事柄があります。
内容は、ある相談の対応過程で弁護士さんから受けた指南のまとめです。
「霊感・スピリチュアル商法等の被害について」
裁判所は、いわゆる「霊感被害」について、以下のように考えています。
一般に、宗教団体が、当該宗教団体の宗教的教義の実践として、信者等に対して儀式等を受けるように勧誘をしたり、任意に寄附や献金を行うよう求めること自体は、宗教の自由の範囲内として違法と評価されません。
そして、金員の出捐を伴う儀式等を受けることを勧誘するに際して、特定の宗教を信じる者が、当該宗教団体における教義等に基づく科学的に証明し得ないような事象、存在、因果関係等を理由とする吉凶禍福を、一定程度有利に解決することができるなどと信者に説明をすることも、その説明内容がおよそ科学的に証明できないことなどを理由として、直ちに違法と評価することもできません。
宗教団体等が、信者等をいたずらに不安に陥れたり、畏怖させたりした上で、そのような心理状態に付け込んで献金等をさせ、それが社会一般的に信者等の自由な意思に基づくものと言えないような態様で行われた場合や、信者等の社会的地位や資産状況等に照らして不相当な多額の金員を支出させるなど、社会的に考えて一般的に相当と認められる範囲を著しく逸脱するものである場合に初めて 、宗教団体の行為が反社会的なものと評価され、公序良俗に反するものとして違法となります。
上記の裁判所の見解が相当かどうかは別問題として、裁判所に訴えを提起した場合には、こうした判断基準で違法性が検討される可能性が高いです。すなわち、教団等に対する損害賠償が裁判所において認められるためには、教団の教祖や職員、信者らの具体的な不安や恐怖心に陥れる言動を立証し、その行為の反社会性を主張しなければなりません。
(以上 霊感・スピリチュアル商法等の被害について)
上記のコメントは、これまで法的なご相談をお受けした際に個別的にお伝えしてきたもので、今後あらたな脱会者の増加も考えられることから、こちらにも残しておくことにしました。
以下は私の考えと気持ちです。
こうした楽観的でないご案内をするのは、決して訴えのご意志を試したり挫く意図でお話していることではありません。損害を回復し、人生を再生させて頂きたいと心から願っています。
けれども、六法全書には必ずしも正義が記されているわけではなくて、裁判官の誰もがカルト問題の構造に深い理解を備え、脱会被害者らに寄り添ってくれているわけでもなくて、老獪なカルトとの闘いは実に切歯扼腕の思いになること多々なものですから、現実として損害賠償請求なども険しい道のりになる場合があることを、予めご理解いただくいておく必要があります。
カルト問題を取り巻く環境は、消費者契約法の改正に見られる通り、遅々とした歩みながらも着々と変化しており、また「青春を返せ訴訟」などを始めとした画期的な前例のように、入念な戦略を練ることによって、かつては見いだせなかった成果が今後実現することもありえるでしょう。
ただし、訴訟には費用や労力など少なからず負担や犠牲が伴い、それが却って当事者の苦しみに繋がることもあります。
ですから、簡単に諦めるのでもなく、反対に思い入れ過ぎるのでもなく、あくまで客観的に状況を整理し、勝訴可能性について専門家の助言を冷静に受け入れる心構えを持つことからスタートして頂きたいと思っています。
【追記】
脱会したとき、もう教団のことは早く全て忘れてしまいたいと、教団関連のグッズや資料を処分してしまう方が多いです。役に立たないものの断捨離は精神衛生上は良いことだと思います。ただし、後になって訴えを起こしたいと思った時、資料がなくては困ったことになりますから、こうした点でも冷静であって頂きたいと思います。
また、ご自身が不要になった資料でも、場合によっては、他の方や教団の問題を社会に明らかにする上で活かせる可能性がありえますから、重要と考えられる資料は必ず保全していただき、判断に迷った際は、MAIKAにご相談ください。
M A I K A―セクトの犠牲者である家族と個人を支えるネットワーク
内容は、ある相談の対応過程で弁護士さんから受けた指南のまとめです。
「霊感・スピリチュアル商法等の被害について」
裁判所は、いわゆる「霊感被害」について、以下のように考えています。
一般に、宗教団体が、当該宗教団体の宗教的教義の実践として、信者等に対して儀式等を受けるように勧誘をしたり、任意に寄附や献金を行うよう求めること自体は、宗教の自由の範囲内として違法と評価されません。
そして、金員の出捐を伴う儀式等を受けることを勧誘するに際して、特定の宗教を信じる者が、当該宗教団体における教義等に基づく科学的に証明し得ないような事象、存在、因果関係等を理由とする吉凶禍福を、一定程度有利に解決することができるなどと信者に説明をすることも、その説明内容がおよそ科学的に証明できないことなどを理由として、直ちに違法と評価することもできません。
宗教団体等が、信者等をいたずらに不安に陥れたり、畏怖させたりした上で、そのような心理状態に付け込んで献金等をさせ、それが社会一般的に信者等の自由な意思に基づくものと言えないような態様で行われた場合や、信者等の社会的地位や資産状況等に照らして不相当な多額の金員を支出させるなど、社会的に考えて一般的に相当と認められる範囲を著しく逸脱するものである場合に初めて 、宗教団体の行為が反社会的なものと評価され、公序良俗に反するものとして違法となります。
上記の裁判所の見解が相当かどうかは別問題として、裁判所に訴えを提起した場合には、こうした判断基準で違法性が検討される可能性が高いです。すなわち、教団等に対する損害賠償が裁判所において認められるためには、教団の教祖や職員、信者らの具体的な不安や恐怖心に陥れる言動を立証し、その行為の反社会性を主張しなければなりません。
(以上 霊感・スピリチュアル商法等の被害について)
上記のコメントは、これまで法的なご相談をお受けした際に個別的にお伝えしてきたもので、今後あらたな脱会者の増加も考えられることから、こちらにも残しておくことにしました。
以下は私の考えと気持ちです。
こうした楽観的でないご案内をするのは、決して訴えのご意志を試したり挫く意図でお話していることではありません。損害を回復し、人生を再生させて頂きたいと心から願っています。
けれども、六法全書には必ずしも正義が記されているわけではなくて、裁判官の誰もがカルト問題の構造に深い理解を備え、脱会被害者らに寄り添ってくれているわけでもなくて、老獪なカルトとの闘いは実に切歯扼腕の思いになること多々なものですから、現実として損害賠償請求なども険しい道のりになる場合があることを、予めご理解いただくいておく必要があります。
カルト問題を取り巻く環境は、消費者契約法の改正に見られる通り、遅々とした歩みながらも着々と変化しており、また「青春を返せ訴訟」などを始めとした画期的な前例のように、入念な戦略を練ることによって、かつては見いだせなかった成果が今後実現することもありえるでしょう。
ただし、訴訟には費用や労力など少なからず負担や犠牲が伴い、それが却って当事者の苦しみに繋がることもあります。
ですから、簡単に諦めるのでもなく、反対に思い入れ過ぎるのでもなく、あくまで客観的に状況を整理し、勝訴可能性について専門家の助言を冷静に受け入れる心構えを持つことからスタートして頂きたいと思っています。
【追記】
脱会したとき、もう教団のことは早く全て忘れてしまいたいと、教団関連のグッズや資料を処分してしまう方が多いです。役に立たないものの断捨離は精神衛生上は良いことだと思います。ただし、後になって訴えを起こしたいと思った時、資料がなくては困ったことになりますから、こうした点でも冷静であって頂きたいと思います。
また、ご自身が不要になった資料でも、場合によっては、他の方や教団の問題を社会に明らかにする上で活かせる可能性がありえますから、重要と考えられる資料は必ず保全していただき、判断に迷った際は、MAIKAにご相談ください。
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