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「植福」の黒歴史~教団幹部の言質を添えて~ ②

「植福」(布施)という信仰上の概念を隠れ蓑にして高圧的に繰り返される幸福の科学の苛烈でえげつない収奪の実態を、教団職員らの言質をもとに明らかにする企画の第二弾として、今回は「幸福の科学事件」と言われる裁判の記録から迫っていきます。

「幸福の科学事件」とは、96年12月に教団職員歴のある元信者が、教団と教団幹部を相手に「献金を強要された」として損害賠償を訴え、これに対し教団側が97年1月に「信用と名誉を傷つけられた」と元信者と弁護士に対して異常な高額の損害賠償で訴え返し、このことについて元信者の弁護士が、「正当な弁護士業務の妨害を意図したもの」として反訴を行って争われた一連の民事裁判事例を指します。

1996.12.26朝日新聞
献金訴訟を報じた記事(1996.12.26 朝日新聞)

1997.1.8朝日新聞
幸福の科学側の逆提訴を報じた記事(1997.1.8 朝日新聞)

元信者が訴えた献金訴訟については、99年5月に「教団側が自由意思を抑圧して違法に献金を強要したとまでは言えない」として棄却され終了。

一方で教団側の訴えについては、2001年6月に「批判的言論を威嚇する目的で違法なもの」として教団側の請求を退け、教団側に対して賠償命令が下されましたが、教団側が上告したため争いは高等裁判所の判断に委ねられました。

しかし、2002年5月に高裁は地裁判決を支持し教団側の訴えを棄却。ここに幸福の科学の敗訴が決定し、日本におけるスラップ訴訟の事例に幸福の科学の名が刻印されたのが、この「幸福の科学事件」の概要です。

今回のテーマは、この裁判の中で元信者から主張された教団幹部らの発言内容でありますが、その前にそれぞれの訴えに対する裁判所の判断について、ざっと押さえておきたいと思います。

以下の引用は、地裁判決に追記するかたちで総括的にまとめられた一連の争いを締めくくる2002年5月27日の東京高等判決によります。

但し、献金訴訟における原告の元信者と被告の教団側の関係が、これに対抗して出された教団側の訴えの中で入れ替わり、さらにその反訴の中で入れ替わりとやや複雑なので、判決文中の控訴人と被控訴人などの記載は削除してイニシャル表示とし、また判決文書の句読点のカンマ表記も変更しています。

まず、元信者(F)の訴えを棄却した理由について。

「献金訴訟につき、平成11年5月25日東京地方裁判所により判決の言渡しがされ、同判決は、Fの請求を棄却したこと、その理由は、Fが大学卒業し、神道の修行経験などを有する成人男子であり、各金員交付の平成2年12月から平成3年6月まで、大川の教えにのめり込み、養父や○○神社の関係者に対し普及のため会員を勧誘したり、幸福の科学の職員にまでなったほか、多額の貸付金をするなど、Yとも個人的に友好関係を維持していたことが認められるから、Yの地獄に堕ちるなどの言動に接することがあったとしても、金員交付につき自由意思を抑圧されて強いられた違法なものであったとは認めるに足りず、400万円については交付事実も認められない、というにあり、更に、控訴審判決では、むしろ積極的にFの自由意思による献金事実が認定されているところでもある。」

1999年5月26日朝日新聞
元信者の請求棄却を報じた記事(1999.5.26 朝日新聞)

次に、幸福の科学側(Yら)の訴えを棄却した理由について。

「前記認定の事実経過のとおり、平成2年12月から平成5年5月まで、相当回数に亘り、本件金員1ないし3以外にも多額の金員が貸し付けられたのは、幸福の科学からの相応の働きかけの結果と推認されるし、その貸付金が一度は返還されたものの、幸福の科学の職員から、再度献金すべき旨総通されたり、それを前提とする確認がされている事実が認められるのであり、Fとすれば、いわれのない他の宗教団体のスパイ嫌疑をかけられ、幸福の科学によるものとしか考えられない嫌がらせ電話や監視などが引き続いたため、Yや大川の教義に対する疑念を抱き、幸福の科学との関わりを冷静に見つめるうちに、信仰心の証明として、「与える愛の実践」という口実で貸金や献金を強制し、「天の倉に富を積む」とか「仏陀への報恩」などの美名のもとに献金を強要され、あるいは「執着すれば地獄に堕ちる」、「和合僧破壊」など、教義又は教団を除名することへの恐怖心を煽って巧みに献金を強要されたに過ぎないと思い至り、献金訴訟の提起を決意したものと認められる。」

「献金訴訟判決の判断は前記のとおりであるが、一般に、入信後間もない信者に対し、多額の献金をさせて教団との関係を密にさせるとともに、教義を盲信する当該信者に対し、教団との関係断絶や教義上の不利益が罹ることをほのめかせて、更にその後の献金を求めたりする方法が、違法性の強い献金総通手段であることは疑いを容れず、事後的に冷静な判断をしてみれば、Fの献金がこのような類のものであったとするFの認識も、一方当事者の評価、主張として全く成り立ち得ないではないのであるから、献金訴訟においてその主張が容れられなかったというのみで、Fが虚偽の事実をねつ造するなどし、献金訴訟の提起によりYらの名誉が毀損されることを認識しながらその訴え提起をしたものとは認められない。」

そして最後に、幸福の科学の提訴の違法性について。

「同教団に敵対する者に対する攻撃ないしは威嚇の手段として訴訟を用いるとの意図を有していたこと、本訴の請求額が従来のこの種の訴訟における請求額の実情を考慮したとしても不相当に高額であることが認められ」、「主に批判的言論を威嚇する目的をもって、7億円の請求額が到底認容されないことを認識した上で、あえて本訴を提起したものであって、このような訴え提起の目的及び態様は裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠き、違法なものといわざるをえない。」
(2001年6月29日地裁判決)

「本訴提起の経過、その背後に推認される目的、その意思決定過程における大川の関与程度、同人の本件訴訟に対する認識と意図した利用目的などは前示認定のとおりであり、仮に、幸福の科学の主張する上記防衛的目的があったとしても、主たる目的が前記のものであると判断されることも前示のとおりである。裁判制度の利用は国民の権利行使の側面から、その不当性を認定するについては極めて慎重であることを要するが、この点を考慮しても、本訴提起には優に不当性を認めることができる。」
(2002年5月27日高裁判決)

2001年6月29日朝日新聞
幸福の科学の敗訴を報じた記事(2001.6.29 朝日新聞)

【関連動画】
「幸福の科学による批判的言論を威嚇する訴訟について」
山口広弁護士


教団側の訴えの棄却とスラップ認定については、社会通念に照らして全く妥当な判断であると思いますが、一方の献金訴訟の判断については、「いわゆる常識的な考え方」で片付けようとしていて、十分に審議を尽くしたものとは言えないと思います。けれども、この上告は棄却されて結審しているので、これが当時の裁判官の限界だったということでしょう。

さて、上記の通り請求自体は認められなかったものの、判決の通り教団側からの虚偽捏造の主張などは退けられ、元信者側弁護士に信じるに足る相応の理由や根拠があったものと認められた被害者が主張する教団幹部らの発言について、それが具体的にはいかなるものだったか、判決文や裁判資料から紐解いていきましょう。

なお、各項目は私の部分で整理したもので、判決文等に表記されているものではありません。また、真実性は否定されていないとはいえ、一方当事者の主張であることも確かなので、ここでもイニシャル表示にしています。

①一般会員のころ

「ブロック長を引き受けて欲しい。この役職は、普通の人はやりたくてもやれない役職なのだ。私がやってくれと言っているのだから、ブッダが任命していることと同義である。引き受ければどれだけブッダのお役に立ち、悟りが上がるか、あの世に行ってみれば分かるが、ものすごい功徳を積むことになるのだ。」

「山梨地区を支部にするのでその事務所賃借料として1000万円程度が必要である。君に用立てて欲しい。」

「お前の財産は仏が救世活動の為に預けたものである。本来はお前のものではない、仏のものである。私の言うことはブッダの代理としての言葉だ。ブッダも救世活動の為にそれを用いることを望んでいる。」

「お金を出さないと、亡くなったお父さんは天国に帰れない。お金を出せば、幽界に彷徨っているお父さんも徳を積むことができて、より高い世界に帰ることができる。お父さんもそれを望んでいる。」

「お金に執着していると、お前もお前のお父さんも地獄に墜ちるがそれでもいいのか。今世に執着を残すと、次の転生ではその反動でみじめな一生を送ることになる。」

②山梨支部の開設後

「Fは光の天使であるYを支える義務がある。」

「Fは、大黒天として、法を広げる使命を持った天使であるYを財政面で支え続ける義務があり、この義務を果たさない場合にはFもその親族も地獄に墜ちるしかなくなる。」

「Fが地区長になれたのはYのおかげだ。だから、Yの言うことは絶対服従しなければならず、Yに逆らうことはYを任命したブッダに逆らうこととなり、和合僧破壊の罪で阿鼻叫喚地獄に墜ちることになる。」

「自分(Y)に逆らった奴は除名してやる。」

「現世の財産は単にブッダからの預かりものに過ぎず、それを私する者は執着心が強い者として、地獄に堕ち、次の転生ではその反動で極貧にしか生まれることはできない。」

③教団職員に採用され支部主任となってから

「上司の指示に従わない者は魔がついている。そんな奴はすぐに還俗だ。」

(※他の脱会者を指して)
「あいつはおかしくなった。悪魔の手先になった。狂った。死んだら地獄に堕ちることが決まった。」

(※意見をする者に対しては)
「お前には魔が入っている。和合僧破壊の罪だぞ。」

「山梨支部が全国の牽引車になるのだ。」

月刊ミラクル0号
ポスティング用の小冊子「月刊ミラクル」

(※月間15万部以上の伝道用小冊子「ミラクル」の仕入れと頒布計画に異論を挟むと)
「うるさい、思いがあればできるのだ。ブッダの代理である私に逆らうと、和合僧破壊の罪で阿鼻叫喚地獄に堕ちるぞ。」

「全生命を伝道にかけろ、献金しろ。」

「死ぬ気になって伝道せよ。」

「お前がミラクルの金は全て出せ。いいな。出さなかったらただじゃおかないからな。おまえら家族は皆全員地獄行きだからな。分かったな。大体お前の財産は誰のものだと思っているのだ。それはみんな我々のものなのだ。ブッダがお前に預けただけなのだ。だから、その財産は、お前を指導する自分が自由に使えるものなのだ。」

「全国で一番になるんだ。山梨支部には全国を牽引する義務があるのだ。」

「4月から6月までの間に山梨支部で6000人の会員を作るのだ。」

「私の言うことを聞かない者は和合僧破壊の罪で人間として生まれ変わることができなくなるんだぞ。」

(※アンケート伝道と称した無承諾伝道の処理について)
「いいか、分かっているだろうな。会費の支払い等は全部お前が出せ。いいな。もし、出さなかったらただじゃおかないからな。お金に執着する奴は地獄行きだからな。」

④ミラクル献金について

「君には土地を売ったお金が10億円位あっただろう。それを教団に対する貸付金にしてみないか。」

「貸付金とはな。お前のように金に執着していて布施ができない奴の為に、布施ではないが、銀行の預金を一時的にブッダにお預けするんだ。必要なときには、それをブッダの為に総合本部で使うんだ。」

「とりあえず、3億円を貸付金にしろ。そうすればお前の死んだ父親もまた上の世界に帰れるのだから、いい親孝行をすることになるのだ。なんだったら、年3パーセントの利息を付けてやってもいいぞ。」

「お前は、今、教団がどういう状況か知っているのか、今、教団は一番大事な時なんだ。支部も増やさなくてはならないし、ブッダの法が広がるか、広がらないかの瀬戸際なんだ。だから、お前だけがいい生活をするんじゃねえぞ。」

「今しかブッダの為に金を使う時はないんだ。お前が金を出すことによって、山梨支部は全国の牽引車になれるんだ。そうすれば全国から布施が集まるんだ。そうすることがお前の役目なのだ。おまえの持っている金は全部ブッダのものなんだぞ。お前の父もあの世から布施をしろと言っているぞ。」

「迷っている場合じゃないんだよ。今しかないんだよ。今、金を出さなかったら、来世は貧乏人にしか生まれられなくなるからな。これが最後のチャンスと思え。こうやって、布施の機会を提供してやっているのだから、言うことを聞け。お前が教団に貸し付けている3億円のうち2億円を布施しろ。わかっているだろうな。逆らったら、和合僧破壊の罪で除名してやるぞ。和合僧破壊は阿鼻叫喚地獄行きだからな。今しか、布施する時はないんだぞ。」

ミラクル献金
ミラクル献金を勧進する当時の教団広告

私は、会員時代は東京西部統括に所属して関東本部には毎週出入りしていたので、山梨の事情はちょくちょく聞いていましたし、本部職員としてYらの事もよーく知っているので、F氏の主張は実感をもって理解することができ、多大な犠牲を強いられたのだなと気の毒に思うばかりです。

90年代には、こうした事実を虚偽だの名誉棄損だのと主張して隠そうとした教団であったわけですが、近頃は悪魔認定や地獄行きといった脅し晒し陰口などが、幸福の科学内の日常会話にすっかり定着しており、そればかりか教祖自ら自分を信仰しない日本人には死あるのみといった趣旨の発言をしているくらいですから、結局のところ立宗当時からの幸福の科学のカルチャーとして、Yらの発言をイニシャルにしてやる意味もないかも知れません。

また、献金訴訟において訴訟対象とされたものを整理すると、以上のような総額2億3,400万円になります。

1990年12月の山梨支部開設資金名下の1,000万円
1991年2月から7月、小冊子「ミラクル」等の代金名下の2,000万円
1991年2月の山梨支部の活動資金名下の400万円
1991年6月のミラクル献金名下の2億円

この内400万円については交付の立証に至らず、また全体としても損害として認められなかったとはいえ、個人と教団の間にこれだけの金銭の取引が生じていたことは客観的な事実です。信者に対して短期間に何の遠慮もなくこれだけの金銭をせびる実態。このことひとつとってみても、幸福の科学がカルトであると断定して何ら憚りないところでしょう。

立証責任は原告側にあり、その立証の部分での不足や問題点を指摘されるならともかく、大卒のいい大人なのだからといった趣旨の裁判所の諭し方には、やはり大きな違和感が残ります。

大学教育を受けた大人なら熱心に信仰活動などしないものというのが、裁判所が描く国民の仕上がり像なのでしょうか?人生の途上で様々な苦悩に見舞われるのは学歴に関わりありません。全てが理屈で片付くものではないし、不安や強迫観念は必ずしも自らへのものばかりでなく、他者への思慕の情に起因するケースも少なくありません。

また、個人的な人間関係が一定期間維持されていたからと言っても、例えばDVのようなモラルハラスメントの場面では常に虐待だけが続くわけではなくて、存在不安に晒される環境下で飴と鞭を使い分けられ、それが気付きの妨げになっている構図があるものです。

とは言うものの、裁判所ばかりを責めるのも不適切であって、当時の状況を考えれば、現実として仕方がなかったと諦めるしかありませんが、原判決はカルト宗教問題への社会的な意識や対策の欠如そのものを象徴しているように思います。

ただし、こうした悔し涙がそれで終わっているわけではなくて、ひとつひとつは関連がなくても、事例研究から知見が蓄積され、次第に実を結ぶケースも表れてきています。

【参考記事】
弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版2012.04.13
速報!!下ヨシ子事件判決 被害者側勝訴!! 事実上、マインドコントロールの違法性が認められる!!

人々のために宗教があり、そのために宗教を手厚く保護するというのであれば、一方でその宗教が人を苦しめるという現実にも立脚して、人々の側に寄り添いしっかりと保護する基準を明確に定めて運用して頂かなければフェアじゃありません。



【当ブログ関連記事】
感謝状改竄が示す「幸福の科学」反社会性の証明
カルト幸福の科学の『恫喝訴訟』
ゴロマキカルト
愛の押し売り。神理の安売り。



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