「神様」のいる家で育ちました 宗教2世な私たち 刊行決定
カルト宗教「幸福の科学」による不当な圧力に屈した集英社が、十分な説明も果たさぬまま突然公開を終了させてしまってから約半年、このたび公開終了に追い込まれていたエピソードに新たに未発表作と描き下ろしの45ページが加えられるなど、アップグレードされたかたちで文藝春秋社から刊行されることとなりました。



菊池真理子さんtwitter
【関連記事】ねとらぼ(2022.8.17)
「集英社で打ち切られた宗教2世漫画、文藝春秋から出版へ「宗教団体からの抗議で消えかけた作品」無事出版へ
【作者について】
「家という密室でまかり通る「おかしなルール」14歳で母が自死した菊池さんの場合」
東京経済オンライン2018.10.7
「家族の絆を美化する「毒親ポルノ」の怖いワナ「まだ親を許せないの?」は言葉の暴力だ」
東京経済オンライン2018.10.14
集英社と異なり文藝春秋社では万全のサポート体制で臨んでいるとのこと。カルトのみならず様々な反社と向き合ってきた練度の違いが頼もしい限りです。
集英社にも最後まで作者と作品を守ろうとした編集者たちがいたことを知っています。今回のことで集英社の社会的信用を失墜させた責任は、あくまでもそうした現場の意志を尊重することなく、カルトと安易な手打ちを行って事態の収拾を図ろうとした、メディアとしてのセンスも矜持もない集英社の管理部門の者たちにあります。
また、2022年7月8日に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件で、逮捕された山上徹也容疑者が統一教会(世界平和統一家庭連合)の熱烈な信者である母親をもち、その異常な信仰によってもたらされた家庭崩壊の実情に長年苦しんでいたいたことが犯行の動機にあることが明るみになったことで、予期せぬかたちで宗教二世の問題にスポットが当たるという半年前とは全く異なる社会環境下であるが故に、作品の刊行に事件が後押しになったとみる向きもあるようですが、一連の経過を悉に見てきた者からすれば、集英社との間で掲載再開についての交渉が破談に終わってから、そう時間を置かずに文藝春秋社との間にご縁が生じていたであろうことに疑問の余地はありません。事件発生の前から堅実に準備されてきていたものが、たまたまこのタイミングで結実したものであることを作者ご自身も別に述べておられます。
文藝春秋「本の話」(2022.8.17)

文藝春秋BOOKS
以前に掲載されていた頃のタイトルのイラストは、主人公が過去を背にして扉から新しい世界に踏み出そうとする姿で、けれどもどこか孤独感も漂っている印象でした。でも、書籍化された今回は主人公と真正面に出会う描写になって、作品中にも似た構図があったように記憶していますが、表紙のものは対象との距離を縮めてより身近にし、見る者の側の心に強く前向きな理解を呼び覚まさせる感じがします。
カルト被害者は殆どが心身共にボロボロの状態で教団から離れます。けれども、一世の場合は自分を取り戻す過程で、二世の場合は自分で自分の育て直しという大変な難題に挑む過程で、それぞれ忘れたい過去と向き合わねばなりません。それは極めて過酷な作業であるだけに、カルト被害者が自分自身について言語化するのは、実は想像以上に困難なことだったりします。
このノンフィクション作品の価値は、そうした激しい葛藤の末にご自身を客観化する作業をやり遂げた方や、いまだ深い葛藤の最中にありながらも身を削るような思いで発した静かな叫びを、ご自身も二世問題の当事者という素地をもった作者が受け止めて表現したところにあると思います。
宗教二世といっても当然のことながら千差万別で、当事者の数だけ様々な境遇があります。表紙の絵のように、それぞれのライフヒストリーを携えて一歩を踏み出し始めた宗教二世たちに対して、私達はまず傾聴し、それぞれの場面でそっと手を差し伸べられる社会でありたい。
作者の菊池さん風に表現すれば「寄ってたかって助ける」社会。カルト問題の中の宗教二世対策の根本は、これに尽きるでしょう。

【相談を求める宗教二世の方は】
「宗教二世ホットライン」
【参考記事】
「集英社が“宗教2世”の体験談マンガ連載を全削除 きっかけは幸福の科学2世の体験談」
日刊カルト新聞
「NHKの特集連発で揺れる「カルト2世問題」の行方 団体側の構造を無視し「親子問題」に矮小化してはならない」
藤倉善郎氏
「カルトの“お気持ち”に屈せず言論表現を守れ」
「コミック連載『「神様」のいる家で育ちました』のご紹介」



菊池真理子さんtwitter
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【作者について】
「家という密室でまかり通る「おかしなルール」14歳で母が自死した菊池さんの場合」
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東京経済オンライン2018.10.14
集英社と異なり文藝春秋社では万全のサポート体制で臨んでいるとのこと。カルトのみならず様々な反社と向き合ってきた練度の違いが頼もしい限りです。
集英社にも最後まで作者と作品を守ろうとした編集者たちがいたことを知っています。今回のことで集英社の社会的信用を失墜させた責任は、あくまでもそうした現場の意志を尊重することなく、カルトと安易な手打ちを行って事態の収拾を図ろうとした、メディアとしてのセンスも矜持もない集英社の管理部門の者たちにあります。
また、2022年7月8日に発生した安倍晋三元首相の銃撃事件で、逮捕された山上徹也容疑者が統一教会(世界平和統一家庭連合)の熱烈な信者である母親をもち、その異常な信仰によってもたらされた家庭崩壊の実情に長年苦しんでいたいたことが犯行の動機にあることが明るみになったことで、予期せぬかたちで宗教二世の問題にスポットが当たるという半年前とは全く異なる社会環境下であるが故に、作品の刊行に事件が後押しになったとみる向きもあるようですが、一連の経過を悉に見てきた者からすれば、集英社との間で掲載再開についての交渉が破談に終わってから、そう時間を置かずに文藝春秋社との間にご縁が生じていたであろうことに疑問の余地はありません。事件発生の前から堅実に準備されてきていたものが、たまたまこのタイミングで結実したものであることを作者ご自身も別に述べておられます。
文藝春秋「本の話」(2022.8.17)

文藝春秋BOOKS
以前に掲載されていた頃のタイトルのイラストは、主人公が過去を背にして扉から新しい世界に踏み出そうとする姿で、けれどもどこか孤独感も漂っている印象でした。でも、書籍化された今回は主人公と真正面に出会う描写になって、作品中にも似た構図があったように記憶していますが、表紙のものは対象との距離を縮めてより身近にし、見る者の側の心に強く前向きな理解を呼び覚まさせる感じがします。
カルト被害者は殆どが心身共にボロボロの状態で教団から離れます。けれども、一世の場合は自分を取り戻す過程で、二世の場合は自分で自分の育て直しという大変な難題に挑む過程で、それぞれ忘れたい過去と向き合わねばなりません。それは極めて過酷な作業であるだけに、カルト被害者が自分自身について言語化するのは、実は想像以上に困難なことだったりします。
このノンフィクション作品の価値は、そうした激しい葛藤の末にご自身を客観化する作業をやり遂げた方や、いまだ深い葛藤の最中にありながらも身を削るような思いで発した静かな叫びを、ご自身も二世問題の当事者という素地をもった作者が受け止めて表現したところにあると思います。
宗教二世といっても当然のことながら千差万別で、当事者の数だけ様々な境遇があります。表紙の絵のように、それぞれのライフヒストリーを携えて一歩を踏み出し始めた宗教二世たちに対して、私達はまず傾聴し、それぞれの場面でそっと手を差し伸べられる社会でありたい。
作者の菊池さん風に表現すれば「寄ってたかって助ける」社会。カルト問題の中の宗教二世対策の根本は、これに尽きるでしょう。

【相談を求める宗教二世の方は】
「宗教二世ホットライン」
【参考記事】
「集英社が“宗教2世”の体験談マンガ連載を全削除 きっかけは幸福の科学2世の体験談」
日刊カルト新聞
「NHKの特集連発で揺れる「カルト2世問題」の行方 団体側の構造を無視し「親子問題」に矮小化してはならない」
藤倉善郎氏
「カルトの“お気持ち”に屈せず言論表現を守れ」
「コミック連載『「神様」のいる家で育ちました』のご紹介」
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